こんにちは。りんじゃです。ご覧いただきありがとうございます。
早速ですが、皆さんは可算名詞・不可算名詞の使い方について自信はありますか?私はありません。「この名詞は数えられて、あの名詞は数えられなくて…」と暗記するのが大変なんですよね。しかし「暗記しないと!」と必死になること自体が、実は落とし穴かもしれません。
今回は「話者の感覚」がどれほど可算/不可算に影響を及ぼしているかということについて、石田秀雄さんの「わかりやすい英語冠詞講義」という本から一部シェアさせていただきます。
目次
話者の認識によって可算・不可算は変わる?!
1. You should study before watching TV.
2. I’m thinking of getting a new TV.
この2つの例文は、どちらも「TV」という名詞を使っていますが、1.では不可算名詞、2.では可算名詞として使われています。1.は、比較的 “ふわっと”しており、話者は「テレビに映し出された画像」といった境界線が緩いものをイメージしています。一方、2.では、話者は「具体的に形あるテレビ」を買うことをイメージしています。そのため、この場合のTVは境界線を有するものであり、可算名詞として冠詞のaが添えられているのです。
「単語によって可算名詞・不可算名詞は決まっているものだ」と思っていた人は、これを知ってびっくりするかもしれません。しかし、日常的には、話者の捉え方によって可算or不可算が変わってくる例が多くあります。
「有界性」とは
可算名詞・不可算名詞を語る上で大切なイメージが「有界性」というものです。有界性とはある名詞の対象が境界線で区切られているかどうかを表す言語学の概念です。
図で表すと以下のような感じです。
それでは、有界性があるかないか(可算名詞を使うか不可算名詞を使うか)はどのような基準によって分けられるのでしょうか。
それには以下の6つの要素があります。
① an area of
② a period of
③ an event/occasion of
④ an instance of
⑤ a kind/type of
⑥ a unit/serving of
以下にそれぞれに基準について簡単にまとめたいと思います。
① an area of
1つ目の基準はan area ofです。2次元の平面または3次元の立体的な空間において境界線によって区切られているかということに焦点が当てられています。
例えば “space”という単語です。英英辞書でspaceの使われ方について調べてみました。
3. There’s space for a table and two chairs.
4. There is a supermarket with 700 free parking spaces.
3.では、話者はspaceの具体的な境界線は定めていないと考えられます。大まかに「テーブルと2脚の椅子が入るスペース」があることを言いたいため、不可算名詞となっているのです。一方4.では、話者は「700の無料駐車場」という仕切られた有界性があると認知しているため可算名詞として使われています。
このan area ofという基準で考えることのできる他の単語には、room, environment, ground, land, paradise, shadow, size, sky, societyなどがあるそうです。
② a period of
2つ目の基準はa period ofです。これは、ある時間を境界線のあるものとして捉えているかどうかが焦点となります。つまり、話者が時間を境界線を定めない大きな概念として捉えているのか、始めと終わりのある一定の時間・期間を指しているのかによって可算か不可算が変わるということです。
5. Their marriage got better as time went by.
6. You lived in Tokyo for a time, didn’t you?
5.で使われているtimeは始まり・終わりを意識することのない非有界的な「時間」を示しています。一方6.では、話者が「東京に住んでいた時間」を一定の期間として認知しており、a timeとすることで、有界的な「時間」であると捉えていることが分かります。
a period ofで分類できる単語には、他にもsilence, history, holiday, life, rest. sleep, vacationといった時間と密着した単語があります。
③ an event/occasion of
3つ目の基準はan event/occasion ofです。
これは、ある出来事や事件に有界生があるかどうかということが基準となっています。
7. We shouldn’t go to war.
8. No one wants to start a war here.
7.では戦争を非有界的なものとしています。つまり、話者は地理的にも時間的にも境界線を定めない大きな意味での「戦争」を表しているということになります。一方、8.では戦争を「一連のまとまりを持った出来事(宣戦布告→交戦→交渉→終戦のような流れ)」として有界的なものと認知しています。
この基準が用いられる単語は、出来事や活動を表すものが多いです。具体的に言うと、revolution, action, comedy, motion, movement, tragedyなどが該当します。
④ an instance of
4つ目はan instance ofです。これはある名詞の個別性、具体性に注目したものです。これは「抽象or 具体」「物質or 物体」のどちらに焦点を当てているかによって有界性の有無が変わり、可算か不可算かに影響します。
「抽象」or「具体」
9. Language is the life of the people who use it.
10. How many languages do you speak?
9.は「さまざまな規則から成り立つ体系としての言語」のことを表しており非常に抽象的なものです。抽象的すぎると、それについて上手くイメージすることができず、結果的に有界性のないものとなるため、不可算名詞とされます。一方10.の例文では「人々が使用している特定の言語」というように、9.と比べると具体性が増しています。そのため、有界的なものとして可算名詞として使われることができるのです。
他の単語としてはbaseball, democracy, education, freedom, industryといったものが一例となります。
「物質」or 「物体」
11. Iron gets easily.
12. I used a steam iron this morning.
11.の場合、Ironは「金属の鉄」であり、非有界的なものとされるため不可算名詞で使われます。一方12.のironは「日常的に使う電化製品としてのアイロン」の意味です。そのため具体的な物体として認知できるため有界的とされ、可算名詞となります。
この基準が用いられる名詞としてはstone, paper, copper, oak, rock などが挙げられます。
⑤ a kind/type of
5つ目の判断基準はa kind/type ofです。これは、ある同じ名詞でも視点も向け方によって有界性を持つ・持たないが変化するケースです。
13. Her house was made of wood.
14. Mahogany is a hard wood and pine is a soft wood.
13.ではwoodに不可算名詞が使われています。これは「素材としての木」であり、ただそれだけです。そこにその木だからもつ独自性や特殊性は見出せません。それに対し14.では、hardやsoftといった形容詞が木の種類(a kind/type of)を説明しています。この場合、名詞に有界性が生まれるため、可算名詞にすることができます。
ただ、形容詞がついた名詞はすべてa/anをつけるのかというとそうではありません。形容詞を伴っていても有界性を持ったものと捉えられない例は実際に存在します。結局のところ、やはり「話者がその名詞に境界線や有界性のイメージがあるか」ということが大きなポイントとなると言えます。
a kind/type ofといった判断基準は、特定の名詞に使われるものではなく、どの名詞を考える時にも適用することができると考えられています。
⑥ a unit/serving of
最後の基準は a unit/serving ofです。これは、a cup of, a glass of, a bottle ofのような不可算名詞を数える単位を使う代わりに、名詞自体に有界性を持たせる認知のあり方を指します。
15. I’ll bring you tea/a cup of tea in a few minutes.
16. Could I get two coffees and a tea, please?
15.では、お茶を「液体」という括りで捉えているため不可算名詞を使っています。また、液体のように数えることができないものはa cup of〜やa glass of〜などを入れることもよく知られています。一方、16.ではこのような表現を使うことなく、名詞に有界性を持たせます。容器を境界線と見立て、two coffees「コーヒー2つ」one tea「お茶1つ」というように数えているのです。この場合、可算名詞として使われることが可能です。
おわりに
いかがだったでしょうか。名詞の中には、これらの基準に必ずしも合致しない例も見られます。しかしそれだけ可算名詞・不可算名詞というものは曖昧であり、可変的なものであると言うことができるのではないでしょうか。
辞書を見て「この単語は可算、あの単語は不可算」と暗記するのではなく、このような判断基準を用いて自分なりに想像したり、使い分けたりすることで、可算名詞・不可算名詞アレルギーを克服できる人がいればいいなと思います。
今回参考にした本は、石田秀雄さんの「わかりやすい英語冠詞講義」です。
この本、文字通り本当に「わかりやすい」です。可算名詞・不可算名詞以外にも、さまざまな冠詞に関するトピックを扱っています。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
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